研究成果概要

国総研資料 第 1278 号


【資 料 名】 GNSS鉛直測位による港湾工事における測深作業の効率化
~最低水面モデルの作成と海上地盤改良工における実地試験~
【概   要】  港湾の建設・改良・維持管理等の水深の基準である管理用基準面には,最低水面が用いられている. しかし,錘測・音響測深等で計測される水深は,現在の水面からの水深であり,最低水面からの水深へ 変換するためには,潮位による補正が必要である.補正に必要となる潮位は,近隣の検潮所で計測 される潮位を使用するが,事前のキャリブレーションが必要であり,また,近隣に検潮所が存在しない 場合の臨時検潮所の設置等が,現場の負担となっている.
 本研究では,港湾工事における生産性向上の一環として,検潮所の潮位を使用せず,GNSS鉛直測位 によって取得可能な現在の水面の楕円体高と,予め作成した最低水面の楕円体高の差分から,最低水 面を基準とした水深を求める手法を検討した.始めに,GNSS鉛直測位の基準となるジオイド高について, 国内のジオイド高の基盤である「日本のジオイド2011」を鹿島港・横浜港・四日市港に適用し, 港湾域における精度検証を行った.次に,日本のジオイド2011のジオイド高を元に,最低水面の楕円 体高である最低水面モデルを作成した.そして,マルチビーム測深と水中スタッフ測量を実施し,GNSS 鉛直測位を利用した水深と従来の潮位補正による水深の計測結果について比較・検証した.
 さらに,作成した最低水面モデルを用いて,海上地盤改良工を対象にCDM作業船による実地試験を 行った.実地試験では,CDM船の深度管理の基準であるデッキ面高について,最低水面モデルを使用 したGNSS鉛直測位による測定と,潮位計と乾舷計を使用した従来の潮位補正による測定を行い、計測 結果の比較・検証を行った.実地試験の結果を踏まえ,港湾工事におけるGNSS鉛直測位活用にあたっての 技術課題を整理し,GNSS鉛直測位活用時のキャリブレーション手法を提案した.
【担当研究室】 港湾業務情報化研究室
【執 筆 者】 廣瀬大輔、川上司、辰巳大介、宮田正史、川原洋、瀬水幸治


研究資料全文

全 文

11,090KB
 
 

目 次

1. はじめに

1.1 背景と目的
1.2 構成

2. 測深作業の課題とGNSS鉛直測位技術の開発状況

2.1 測深の基準
2.2 GNSS測位の概要
2.3 GNSS鉛直測位の利用
2.4 楕円体高基準水深測量に関する検討
2.5 まとめ

3. 最低水面モデルの作成

3.1 港湾域における「日本のジオイド2011」の適用性の検証手順
3.2 港湾ごとの「日本のジオイド2011」の適用性の検証結果
3.3 重力計測
3.4 最低水面モデルの作成手法
3.5 まとめ

4. GNSS鉛直測位を利用したマルチビーム測深の実地試験

4.1 GNSS鉛直測位を利用したマルチビーム測深の精度検証
4.2 水中スタッフ測量とマルチビーム深浅測量の比較
4.3 まとめ

5. 地盤改良工の施工現場におけるGNSS鉛直測位の実地試験

5.1 試験概要
5.2 試験結果
5.3 考察
5.4 実地試験結果を踏まえた今後の対応策の提案
5.5 まとめ

6. おわりに

6.1 主要な結論
6.2 今後の課題

謝辞

参考文献